2013年09月27日

3DCG映画 『キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-』 感想 レビュー







 3D-フルCG映画『キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-』を観てきました。生まれて初めての3D映画鑑賞です。

 最近、松本零士氏のアニメ作品をいくつも見直していましたが、ハーロックの映画化の話を知った時に、おそらく特別な意味を持った作品になるだろうと直観し、密かに期待しながら見に行きました。。 結果は期待に違わない、いや、ある意味それ以上だったと言えるかもしれません。

 壮麗なフルCG画面、迫力ある3D映像!。にもかかわらず往年のファンの方々にはきっとご不満の方も多いのではないかと思います。なぜならこのキャプテンハーロックはあらゆる意味において過去の作品のイメージを覆してあまりある作品となっていたからです。ですが、この作品には現代におけるさまざまな事柄に対する貴重なメッセージが多々含まれていると感じましたし、その点においては非常に価値のある内容だったように思います。

 この映画には色々な象徴が込められていると思いますが、現時点で気がついた事を二つ三つ書き留めてみたいと思います。

 なお、このレビューはあくまで個人的な感想を綴ったものに過ぎませんので、未熟な部分等ありましたらどうかお許しください。

 最近の松本作品には「ガイア」、すなわち地球生命、地球意識をテーマにしたものが多いと思います。そして、今この時代において人類が向き合うべき最も重要なテーマの一つはガイアについてだと思いますが、松本先生の作品は近年に近づくにつれて作品の中でガイアについて描かれた部分が大きくなっているのはさすがだと思います。

 ところで、この映画では宇宙には人類以外には知的生命体がほとんど存在しないという設定になっています。おそらく事実は違うと思いますし、過去の松本作品の世界観とも大きく異なっていますが、ここはその食い違いに囚われてしまってはいけないのだろうと思います。
 
  設定に矛盾があることなどおそらく原作者の松本先生ご自身が一番よくご存知でしょう。にもかかわらずあえてそうした設定を使ってきたということは、おそらくその裏に何か重要なメッセージが隠されているのではないかと思います。

 ですので、取りあえずは「そうした設定の中でこの映画のような状況が生じた場合にどう考えるか」という一つのケーススタディとして考察してみたいと思います。

 そうすることで逆に物語の場面と現実の世界の出来事が相似形として理解しやすくなるケースも出てくるのではないでしょうか。

 ※ご注意

 以下の内容は基本的にネタバレ有りで書かせて頂く形になると思いますのでご了承ください。



「己を縛るものと闘え!」

 ハーロックはこの作品では恐怖と呪いの象徴のような存在として扱われています。そして彼の目的とする所は、時間を宇宙開発時代の前まで巻き戻すという、見方によっては今現在の宇宙そのものの破壊とも言える宇宙の大改変です。言わばインドの破壊神シヴァのような存在といえるかもしれません。

 それに比して彼の後継者とも言えるヤマはいろいろな意味でハーロックと相似形ですが、最終的には顔と目に同じ傷を受けて見た目までそっくりになってしまうのです。

 仏教の後期密教の尊格の中にシヴァ神の化身と言われるヤマーンタカ(大威徳明王)という尊格がありますが、名前からしてこのヤマはヤマーンタカになぞらえることができるように思います。

 ちなみにヤマーンタカとは「ヤマ(インドの死の神)を殺す者」という意味ですので、ヤマという名前でありながら「ヤマを殺す者」という名前の尊格をなぞらえるのはおかしいのかもしれません。しかし最初はヤマ自身が自分の分身とも言えるハーロックを殺しに来た暗殺者でしたし、また明らかに過去の過ちを悔いる余り死に急いでいる感じでしたので、案外この名前で合っているように思います。

 私の好きな映画の一つに「地獄の黙示録」がありますが、地獄の黙示録もやはり、恐怖の支配者であるカーツ大佐とそれに対する若い暗殺者の物語でした。そしてこの映画でも、暗殺者であるウィラード大尉は冒頭のナレーションで「カーツについて語ることは自分自身について語ることだ。」と述べた通り、映画の中でどんどん自分をカーツに重ね合わせていってしまうのです。そしてカーツはウィラードが自分の苦悩を終わらせてくれることを望み、それを知ってしまったウィラードは、心からの愛惜を込めてカーツの命を絶つのです。

 ヤマの場合はハーロックを殺害しませんでしたが、展開次第によっては殺す選択も有り得たラストの内容でした。よく似たストーリー構造を持った映画だったと思います。

 カーツの場合は、冷戦下における代理戦争の渦中に現代社会の壮絶な虚偽と罪業を垣間見てしまい、精神を病んで恐怖の独裁者に成ってしまうという、まさに現代文明の闇と呪いを一身に背負ったかのようなキャラクターでした。そしてこの映画のハーロックも、為政者たちの醜悪な欺瞞を知って怒りの余り攻撃した結果、図らずも愛してやまない地球を死の星にしてしまい、おまけにダークマターを全身に浴びた影響で死にたくても死ねない身体になってしまうという、まさに呪われた存在として描かれているのです。

 途方もない絶望に喘ぎながら死ぬことも許されないハーロックは、希望ともいえない僅かな可能性にすがるしかなかったのでした。ケイの「私たちはキャプテンの絶望にすがりついた蝿でしかない」という台詞も、彼らの苦悩と絶望を表していて胸を打ちます。最後にハーロックが自分の思いを継いでくれる若者と出会えたのは、本当に救いだったに違いありません。

 そしてハーロックの若き後継者ヤマですが、話の規模は違いますが個人的なレベルではハーロックに負けず劣らずの悔恨と苦悩を抱えています。自分の過ちによって愛する人と自分の兄を地獄のような苦しみに逢わせてしまうという、まさに絶望的な過去を背負っているのです。物語の当初に彼が死に急いでいたのも無理からぬことだったかも知れません。

 そしてヤマはハーロックと関わりながら敵になったり味方になったりと揺れ動きますが、最終的には地球を救うという目的において合致していきます。しかも、ヤマの個人的な過去についてもこの問題に深く結びついて行くのです。

 彼を地球の運命に結びつけたのは他ならぬ彼の想い人だったナミでした。ナミはヤマの起こした事故によって身体機能のほぼすべてを失い、脳だけが生きているという不幸な女性です。ヤマの亡くなった母親は地球の植物をこよなく愛した人でしたが、ナミはヤマの母親の意思を受け継ぎ、脳波だけで自分の立体ホログラムを動かして、彼の母親の好きだった地球にしか咲かない花を宇宙の栽培施設で咲かせることに成功するのです。

 ナミの死後、彼女の花に託した思いを知ったヤマは、ナミに対する想いと彼女が愛した花の咲く地球への想いが重なっていきます。そして無謀にもダークマターに覆われた死の星、地球へと強行着陸を試みるのです。きっと彼にとって愛するナミと母の魂が地球に宿っているように思えてならなかったのでしょう。そしてその行為こそが人類に新たな希望をもたらす契機となっていくのです。

 こじつけかもしれませんが、ナミという名前はイザナミの神を表しているように感じます。イザナミの神は大地の生みの親であり、地母神的な神様ですが、地母神といえばガイアと同体であるとも言えるかもしれません。そしてナミはヤマの母の後継者であり、その母は地球の植物をこよなく愛する人だったのです。しかも、身体はほぼ死んでいるに等しい植物状態として登場し、最後には本当に死んでしまいます。死んで冥界に旅立ち、夫のイザナギの神が連れ戻そうとしてもかなわなかったイザナミの神の物語と、何処か重なって感じるのは私だけでしょうか。いずれにしてもナミとヤマの美しくも哀しい物語は、地球を愛するハーロックの物語にも似て非常に胸を打ちます。

「すべての生命はその内側に永遠を宿している。」

 作品の中から伝わってくる様々なメッセージはあまりにも深遠すぎてとても言葉に表現しきれないものばかりです。例えば「すべての生命はその内側に永遠を宿している。」というセリフがあります。もうこの一言ですべてを言ってしまっているように感じるのですが、じゃあ具体的に何を言っているのかというと非常に説明が難しく思うのです。 そこでこの記事ではこの言葉からどんな象徴が読み取れるかということについての個人的な考察を数挙してみるに留めてみたいと思います。

 例えばここで言う永遠とは何でしょうか。生命にとっての永遠とは即ち不死のことでしょう。そして同時に生命は時間の干渉を受けないということを意味しているはずです。しかし作品内でも語られているように時間の干渉から外れるということは宇宙の因果律から外れることと同義です。宇宙の法則を超えているのだからそれはまさしく神に等しい存在だと言えるかもしれません。とするならば「すべての生命はその内側に永遠を宿している。」という言葉は「すべての生命はその内側に神(全知全能の創造者)を宿している」という言葉に言い換えられるということになるのでしょうか。

 あるいはインド思想的に言えばブラフマンとアートマンとの関係にも例えられるかもしれません。そして人類の無知と過ちの罪業を一身に受け、ダークマターに身を侵されて呪われた不死の身体となってしまったハーロックは、インド神話の乳海攪拌においてヴァースキ竜の吐き出した猛毒を飲み干して身体中が青黒く染まってしまったシヴァ神を彷彿とさせます。

 地球を深く愛するがゆえに苦しみ続けてきたハーロック。それでも諦めきれずにわずかな希望を探して人類再生の道を探り続けたハーロックだからこそ、自分の方法論とは全く違う可能性をヤマから教えられた時に、過去にこだわることなくすぐに新たな可能性に賭け直すことができたのではないかと思います。 ここまで地球を愛しているキャラクターを私は他に思い浮かべることができません。しかし、この映画を観た人は、おそらく誰でも地球がとてつもなく愛おしい存在として感じられる瞬間を経験できたのではないでしょうか。 そしてそれこそがこの映画の最大のメッセージであるように思うのです。

 ガイア。愛すべき母なる地球・・・。

 もちろん地球は人類だけのものではありませんし、ましてや宇宙全体が人類だけのものであるはずもありません。しかし、この映画では全宇宙における知的生命体は人類の外にはニーベルング族の生き残りであるミーメただ一人という設定になっています。 ここでこの設定が生きてくるのではないかと思います。

 つまり、この映画の世界観では人類のみが全宇宙に対して知的生命体としての責任を負わなければならない立場として描かれているわけですから、この現実の世界、即ちおそらく地球人をはるかに超えた知性と科学力を持った生命体が数多く存在しているであろう実際の宇宙に引き比べて考えるならば、地球内外を問わずすべての知的生命体を含めたあらゆる生命体に等しく投げかけられたメッセージであると読み解くべきなのだと思います。

 例えば地球以外にたくさんのエイリアンがいるにもかかわらず、単に地球人類が衰退したという理由だけで全宇宙の時間を巻き戻してしまったら、それこそはた迷惑にもほどがあるでしょう。あくまで人類以外にエイリアンがいないという設定だからこそ成り立つストーリーなのです。 この現実と似て非なる世界観において何が共通の価値観として語られているかを読み解いてかないと、言葉通りに解釈してしまったら、まるで当を得ない見解を引き出してしまうことになりかねないし、所詮作り話だよということで決めつけられて終わってしまう場合も出てくるでしょう。

 一般にはこうした話の作り方は子供向け作品にありがちなご都合主義と言われることが多いわけですが、この作品においては、いろいろな意味でそうした解釈に収まりきれる内容ではないと考えてます。
  例えば世界各地に伝わる神話の内容は現代的な解釈で言えばご都合主義そのものですが、しかしそんな単純なものではないことはご理解いただけると思います。 神話の中には人類の共通無意識につながる象徴が山ほど詰め込まれていると思いますし、人類の文化や思想、宗教の発展の過程を読み解くこともできるでしょう。言わば人類の精神史の記録のようなものだと思います。

 奇しくもジェームズ・キャメロン監督はこの映画に対して「神話のようだ」と賛辞を送りました。そう、まさにこの映画は神話として読み解くべき現代の黙示録なのかもしれません。(そういえば前述した地獄の黙示録も原題は Apocalypse Now <現代の黙示録> でした。)

 昔から松本零士氏は生と死を見つめ、地球と人類と大宇宙との関係について常に考え表現し、作品として世に送り出してきた作家です。このハーロックの映画はそうした彼の作家生活の一つの集大成だと思いますし、間違いなくガイア(地球意識)の祝福を受けた作品であると考えています。 そのメッセージを自分がどこまで読み解くことができたか分かりませんが、この映画とガイアとの関係について考察される機会に少しでもなれたら幸いです。

 この作品から読み解けるメッセージはまだまだ山ほどあるわけですが、長くなりましたので続きはまたの機会に譲りたいと思います。

 

posted by バルちゃん at 12:16 | TrackBack(13) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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